横山秀夫の「陰の季節」。
D県警シリーズの第一弾小説で、
「陰の季節」、「地の声」、「黒い線」、「鞄」の
4つの短編で構成されています。
警察小説はあまり読んだことがないので、
「半落ち」にしても買ってから読むまでに相当の空白がありました。
"空白の6か月"ぐらい(笑)
何か読みずらそうというアレルギーみたいなものがあったのですが、
実際に読んでみると、その心配はまったくの無用でした。
短編なのでちょっとした時間に読めるし、
むしろ、読み終わった頃には澄み渡った青空のような爽快ささえ感じられます。
犯罪の捜査をする刑事が主人公という訳ではなく、
刑事部以外の部署にスポットライトが当てられています。
警察OBのポスト居座り、密会、失踪、
そして議員が持つ言葉の爆弾。
それらがキーワードとなって、様々な人間ドラマが描かれています。
基本は最後にドンデン返しが待っているような謎解きストーリーですが、
「犯人はこの人でした」のような終わり方でなく、
それによって引き起こされる主人公の感情の変化が面白い。
特に「地の声」は、ドンデン返しのドンデン返しのような結末で、
なんじゃこりゃと、ちゃぶ台返しをしたくなるオチでした。
めちゃくちゃ面白い。
警察という世界の中での出世争いを描いているとも言えますが、
出世のためならそこまでするかという内容に人間の闇を感じます。
「鞄」はその最たるものでしょうか。
"三十を過ぎたら友だちってのはもうつくれないよ"
という記述はちょっとグサッときました。
友達は信頼できる人が1人いればいいみたいなことを聞くけど、
同じ世界を生きている人に求めない方がいいのかなと思いました ^^;
一見、引っかかるような文章も、
あとあとになって伏線回収のような役割を果たしてます。
風景描写もしっかりあって、頭の中でドラマを描きながらストレスなく読めました。
著者の筆力と発想力に驚嘆します。
「64」とか「ルパンの消息」とかも買ってあるので、
自粛期間中に読んでおこうと思います。
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